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[vol.57] 過去から未来へ…永い生命を紡ぐ古民家リフォーム

設計:小宮成元さん

建築家の設計リフォーム例(vol.57)(小宮成元) 設計者プロフィールへ

増築された渡り廊下から、古家の回廊へつづく様子。回廊の両側に並ぶ建具によって感じさせられる奥行きは、この家が紡いできた時の長さのようにも思えます。

矢印 リフォーム前の写真
矢印 リフォーム前後の図面
リフォームデータ
家族構成 夫婦
リフォーム床面積 第1期:64.0平米、第2期:7.5平米
工事期間 第1期:10ヶ月、第2期:1ヶ月
総工費 3,400万円
写真 安川千秋(第2期:TAU設計工房)
 

リフォームの経緯
古民家リフォーム「五葉松の家」
Mさんは、「敷地70坪、古家あり築50年」というチラシの文字に惹かれて出会ったこの家を気に入り、購入を決意されました。
家の内外に感じられる趣を壊さずに、どのように手を加えれば自分たちの快適な住まいになるのか悩まれていました。そこで、古くからの知人だった建築家・小宮成元さんに相談することにしました。
小宮さんとMさんは、古民家の佇まいを残しながらも現代の暮らしにあった住まいへと蘇らす方法をじっくりと話し合いました。2階の一部を残しながらも、大胆な増改築を行う方向でアイデアがまとまり、Mさんのリフォームがスタートしました。

Mさんのリフォームでこうしたい!
古民家の佇まいを残しながらも現代の住空間にしたい。
使用されていた資材は最大限に再利用したい。
それぞれの部屋の用途にあった雰囲気のある家にしたい。

今回のリフォームポイント
旧・新の対比と北東庭との融合を図る。
自然素材や再生素材の利用と、それらが適材適所となる材料の選択。
  光と風を考えたオープンな空間をつくる。


[旧・新、そして緑・・・ガラスボックスによる融合]
       
   
1 大量消費社会だった20世紀を改めて考えると、これからは資源の有効利用やエコロジーへ配慮した住宅、そして自然と共生するような家づくりを目指したいと考えます。古家だからといってただ壊すのではなく、手を加えることで新しく、そして永い生命を吹き込むことができます。
 
2 Mさんは、自分たちが住まい続けていたのではなく、新しく手に入れた古家でありながら、その佇まいを残したいと考えられました。その思いを大切にしながら現代の暮らしにあった住空間を実現することも、設計者として大切な役目だと考えました。
 
       
 
3 Mさんの要望や建物の老朽具合から、古家の2階の一部を残すものの大規模な増改築となる今回のリフォーム。ほとんどが新しくなるために、旧いものと新しいものの間に違和感が生まれないよう、そしてデザイン的にどちらも浮いてしまわないよう、どのように融合させるかというのが最初の課題でした。
 
4 シーン1メイン1そこで提案したのが“ガラスボックス”という、両者を生かすものです。玄関とらせん階段の機能とギャラリー、そしてリビングの要素を持たせたもので、家の中心空間となりました。


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5 シーン1メイン2道路からのアプローチを進むと、まずガラスボックスと、その先にある庭の豊かな緑が目に入ってきます。そこから庭側へ回り込むようにして玄関へと辿り着くようにプランニングをしたため、来客者は古民家と庭の巨木が醸し出す独特な空間を感じることになります。

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矢印 [全体配置のわかるアイソメ図]をご覧下さい。
矢印 [ガラスボックス]をご覧下さい。
 
6 シーン1メイン3リビングやキッチンからも、吹抜けとなっているガラスボックス越しに五葉松が望め、庭の緑に包まれた暮らしの中でいつも四季の移ろいを感じることができます。

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7 このようにガラスボックスによって、旧いもの・新しいものの融合、そして緑との融合という相乗効果を生み出すことができました。
     
       

[“残すもの+利用するもの+新しいもの”でつくる]
       
   
1 材料を選定する上で、無垢の木材や珪藻土、古材の再利用などを考えましたが、もちろんこれらにも適材適所というものがあります。
 
2 古い家には、今では手に入らないもの、そして古いからこそ趣のあるものが沢山あります。この家では、まず“残すもの”を考え、そして次に“利用するもの”をMさんと一緒に選びました。
       
 
3 シーン2メイン1古家の趣を特に残したかったのは2階部分です。回り廊下に吹きガラス、和室の続き間や建具をそのまま残すだけでなく、増改築した部分でも再利用できる古材を使い、統一感を大切にしました。照明器具も修理を施し、再利用しています。

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矢印 [古家の趣を残した2階]をご覧下さい。
 
4 このように、とことん古家の趣にこだわった2階に対し、1階はモダン空間としました。外観上もダイニングの開口部は両開きの輸入木製建具、庭へはデッキが張り出すというもので、2階古家部分との調和を図るため外壁は漆喰塗りとしました。
 
矢印 [モダン空間に溶け込む古材]をご覧下さい。
 
矢印 [基礎の改修と床下収納]をご覧下さい。
 
       
 
5 シーン2メイン2内部では吹抜け部の壁が、ガラスボックスと古家を繋ぎます。2階渡り廊下の建具の向こうには回廊が続くのですが、建具上部の垂れ壁をアールにすることで両側のデザインの調和を図りました。丸窓は既存まま残し、吹抜け側の壁を漆喰風に仕上げています。

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6 シーン2メイン3古家だからといって古材だけでリフォームをするのではなく、新しいものも取り入れ方にさえ気をつければ古材との調和を図れます。そして時には思い切って異質なものを組み合わせるということが、解決に繋がることにもなります。

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[永く時を紡ぐための“完成しない家・第2期工事”]
       
   
1 建物に完成はなく、経年や住まい手のライフスタイルによって変化していくのではないでしょうか。取り壊して建てなおすのではなく、変化させながら住まい続ける。そうして永い生命を紡いでいく住宅となるようにと心がけています。
 
2 Mさんの家は古家を購入し、ご家族4人の住まいとしてリフォームしました。ところがしばらくして家族構成に変化がありました。その間も何回か軽微な改修等を行っていましたが、ご夫婦2人のお住まいとなった今、Mさんは自分たちの暮らしをより楽しむために、この家に新しい変化をもたせることを決めました。
       
 
3 シーン3メイン1この2回目のリフォームではサンルームをつくりました。ガラス屋根を持つ多角形のこの空間は、「外のような内」、又は「内のような外」という曖昧で半戸外なものです。多角形としたことで外観上は存在感があり、この家の新しいアクセントとなりました。

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矢印 [サンルーム]をご覧下さい。
 
4 シーン3メイン2ガラスボックスの2階部分から庭へ目をやると、サンルームの屋根や回廊のガラスに樹木の緑が移りこみます。サンルームの屋根と2階部分との取り合いには、時を重ねることでより馴染む素材として銅製金物を用いています。

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5
シーン3メイン3このリフォームでは、2階の和室にも少し手を加えました。床の間の壁にスリットを開けて、借景の掛け軸をつくったのです。この掛け軸スリットからは緑だけでなく、南空からの光も得ることができ、畳に樹木の陰がゆらぎます。

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矢印 [掛け軸スリット]をご覧下さい。
 
6
 Mさんは今後、家の一部をギャラリーとして開放されるそうで、今回はそれを意識したリフォームでした。このように住まい手のライフステージに合わせて“家”という器を変化させることで、これからまた新しい時を紡ぎ続ける家となったのです。
 
       


建築家のこだわりメッセージ
  私共の目指しているのは「健康住宅」、これはリフォームでも同じことです。
1.永く住まえる住宅
 ・光と風を考えた住まい
 ・ライフスタイルの変化や社会の変化に対応できる住まい
 ・オープンな間取り、シンプルな動線の確保
2.自然素材や再生素材を利用した呼吸している住宅
 ・無垢の木材や珪藻土、古材の再利用等適材適所な材料の選択
3.地震や災害に強い住宅
 ・リフォームの場合は建物の健康診断により適切な構造的補修
  補強を行い、安心して住まえる住宅
4.維持するのに省エネルギーである住宅
 ・断熱性能を高める事やパッシブソーラーエネルギーの利用等
5.地域、まち並みに根ざした住宅
 ・そこでしか成立しない世界で一つの家づくりを
 ・思い出という価値を大切に、永い生命を紡いでいく住宅へ
 
   
建築家のこだわりメッセージ
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